NTRK Plusー私のNTRK融合遺伝子検出経験ー
VOL.8 甲状腺癌(恵佑会札幌病院)

監修
渡邉 昭仁 先生

渡邉 昭仁 先生

恵佑会札幌病院
耳鼻咽喉科 主任部長/
頭頸部外科 部長

出町 拓也 先生

出町 拓也 先生

恵佑会札幌病院/
薬剤科

本冊子「NTRK plus」は、“私のNTRK融合遺伝子検出経験”というサブタイトルが示すように、NTRK融合遺伝子陽性患者の存在を認知いただき、実際にがんゲノムプロファイリング(CGP)検査より検出された経験を共有することを目的としている。
第8号では、恵佑会札幌病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科でのNTRK融合遺伝子検出例を紹介する。本施設は、2009年に「地域がん診療連携拠点病院」に指定され、札幌市の中核病院として、地域の医療機関との連携・協力関係を構築している。また、2019年4月には「がんゲノム医療連携病院」に指定され、がんゲノム医療が提供可能な施設となった。同年からCGP検査を開始し、がんゲノム医療に積極的に取り組んでいる。
今回、本施設 耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診中の甲状腺癌術後再発多発肺・肝転移と診断された患者に対して、CGP検査およびエキスパートパネルでの議論の結果、「NTRK融合遺伝子陽性の甲状腺乳頭癌(濾胞型)」であることが判明し、ヴァイトラックビ治療が開始された。

目次

恵佑会札幌病院におけるがんゲノム医療におけるがんゲノム医療

当院で実際に経験したNTRK融合遺伝子陽性症例の検出

恵佑会札幌病院におけるがんゲノム医療

恵佑会札幌病院では、円滑にがんゲノム医療を実施できる体制構築のために、腫瘍内科、各診療科(主治医)、病理診断科、がん遺伝外来との院内連携を図っている

  • 所在地: 北海道札幌市
  • 病床数: 229床(緩和ケア病床 20床、HCU8床を含む)
  • 診療科: 24科(外科、消化器外科、呼吸器外科、呼吸器腫瘍内科、乳腺外科、気管食道外科、消化器内科、腫瘍内科、緩和ケア内科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科、泌尿器科、放射線診断科、放射線治療科、病理診断科など)

HCU:high care unit

当院の基本情報

拠点病院などの指定状況

  • 2009年4月 :地域がん診療連携拠点病院に指定
  • 2019年4月 がんゲノム医療連携病院に指定
  • 2019年6月 :がんゲノムプロファイリング(CGP)検査を開始

CGP検査実施件数

2023年27件、2024年25件

耳鼻咽喉科・頭頸部外科における甲状腺癌の診療状況とがんゲノム医療

甲状腺癌患者の例数(年間)2024年:70例超程度
甲状腺癌患者に対する手術件数(年間)2024年:70件(乳頭癌68例、濾胞癌1例、髄様癌0例、未分化癌1例)
甲状腺癌患者のうち、進行/再発例数(年間)2024年:11例(乳頭癌10例、濾胞癌0例、髄様癌0例、未分化癌1例)
  上記のうち、薬物治療が施行された患者さんの例数(年間) 2024年:5例(乳頭癌5例、濾胞癌0例、髄様癌0例、未分化癌0例)
進行/再発症例のうちCGP検査実施例数(年間)2024年:2例 2023年:3例(乳頭癌3例、濾胞癌1例、低分化癌1例)
甲状腺癌患者・ご家族のがんゲノム医療に対する認知度
(先生ご提案前からゲノム医療を知っている患者さんの割合)
低い
医療従事者から説明を受けた後の、甲状腺癌患者・ご家族のがんゲノム医療に対する積極性高い
甲状腺癌診療における他診療科との院内連携の状況良好

がんゲノム医療に関わる部門・診療科と役割分担

腫瘍内科を中心に、各診療科・部門が連携し、患者さん一人一人の特徴に合わせた治療を提供できるよう、積極的に取り組まれている。

がんゲノム医療に関わる部門・診療科と役割分担

*1:腫瘍内科の場合もあり
*2:慶應義塾大学病院

がんゲノム医療

  • 腫瘍内科を中心に実施
  • がん遺伝子パネル検査[説明・同意取得、実施]は保険診療のもと腫瘍内科で実施
  • 円滑にがんゲノム医療を実施できる体制構築のために、腫瘍内科、各診療科(主治医)、病理診断科、がん遺伝外来との院内連携を図っている

エキスパートパネル

  • 慶應義塾大学病院(がんゲノム医療中核拠点病院)で開催
  • 通常の参加者: 腫瘍内科医、病理医、看護師(認定遺伝カウンセラー)
  • 検討内容: 検査結果を踏まえた適切な薬剤や治療法、参加の可能性がある臨床研究・治験の有無 など

地域連携

  • 地域がん診療連携拠点病院*として、2006年11月に地域医療連携室が発足して以来、地域の医療機関との連携・協力関係を構築している
  • 地域医療機関の医師、メディカルスタッフとの連携を図り、地域がん医療への貢献を行うことを目的として、外部医療機関の方も参加できる研修会(「地域連携カンファランス」など)を開催している

*3:最新情報はこちらをご参照ください https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin.html(2025年8月閲覧)

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

当院で実際に経験したNTRK融合遺伝子陽性症例の検出

甲状腺癌と診断後、CGP検査の結果、「NTRK融合遺伝子陽性の甲状腺乳頭癌(濾胞型)」であることが判明し、ヴァイ トラックビ治療が開始された症例

症例報告者:渡邉 昭仁 先生(恵佑会札幌病院 耳鼻咽喉科 主任部長/ 頭頸部外科 部長)

こちらのページは会員限定コンテンツです。
続きは会員ログイン後にご覧いただけます。