NTRK Plusー私のNTRK融合遺伝子検出経験ー
VOL.7 小児脳脊髄腫瘍(大阪市立総合医療センター)

監修
山崎 夏維 先生

山崎 夏維 先生

大阪市立総合医療センター
小児血液・腫瘍内科
医長

本冊子「NTRK plus」は、“私のNTRK融合遺伝子検出経験”というサブタイトルが示すように、NTRK融合遺伝子陽性患者の存在を認知いただき、実際にがんゲノムプロファイリング(CGP)検査より検出された経験を共有することを目的としている。
第7号では、大阪市立総合医療センター小児血液・腫瘍内科でのNTRK融合遺伝子検出例を紹介する。本施設は、大阪市の中核病院として地域医療機関と連携し、市民の“健康と生命を守る最後の拠り所”として必要な医療を提供できるよう努めている。2005年には「地域がん診療連携拠点病院」に指定され、ますます増えると予測されるがん患者の心強いサポーターとなるべく、がんの集学的治療を推進してきた。また、本施設は2018年に「がんゲノム医療連携病院」に指定され、がんゲノム医療が提供可能な施設となった。2019年より保険診療でのCGP検査を開始し、2024年6月には「エキスパートパネル実施可能がんゲノム医療連携病院」に指定されるなど、がんゲノム医療に積極的に取り組んでいる。
今回、本施設小児血液・腫瘍内科を受診中のPolocytic astrocytoma(毛様細胞性星細胞腫)と診断された患者に対して、CGP検査およびエキスパートパネルでの議論の結果、「NTRK融合遺伝子陽性の腫瘍」であることが判明し、ヴァイトラックビ治療が開始された。

大阪市立総合医療センターにおけるがんゲノム医療

がん治療は、がんゲノム医療の進展により、さらに複雑かつ高度化していくことが予想される。大阪市立総合医療センターでは、高い専門性と幅広い知識・技能を有するメディカルスタッフによるがんゲノム医療に積極的に取り組んでいる。

  • 所在地: 大阪府大阪市
  • 病床数: 1,063床(一般741床、小児134床他)
  • 診療科: 46科(小児血液・腫瘍内科、小児脳神経外科、腫瘍内科、脳神経外科、血液内科、総合診療内科、呼吸器内科、呼吸器外科、消化器内科、消化器外科、婦人科、乳腺外科など)
当院の基本情報

拠点病院などの指定状況

  • 2005年1月 :地域がん診療連携拠点病院に指定
  • 2013年2月 :小児がん拠点病院に指定
  • 2018年4月 がんゲノム医療連携病院に指定
  • 2019年9月 がんゲノム医療拠点病院に指定
  • 2019年11月 :保険診療でのがんゲノムプロファイリング(CGP)検査を開始
  • 2023年4月 がんゲノム医療連携病院に指定
  • 2024年6月 エキスパートパネル実施可能がんゲノム医療連携病院に指定

CGP検査実施件数

2021年101件、2022年120件、2023年131件

小児血液・腫瘍内科における脳脊髄腫瘍の診療状況とがんゲノム医療(2023年実績)

小児脳脊髄腫瘍入院患者の例数(年間)23例
小児脳脊髄腫瘍に対する手術件数(年間)20件
小児脳脊髄腫瘍患者のうち進行・再発症例数(年間)7例
進行・再発症例のうち薬物治療施行例数(年間)7例
小児脳脊髄腫瘍患者におけるCGP検査実施例数(年間)12例
CGP検査実施例のうち進行・再発症例数(年間)6例
小児脳脊髄腫瘍患者・ご家族のがんゲノム医療に対する認知度約3割
医療従事者から説明を受けた後の、小児脳脊髄腫瘍患者・ご家族のがんゲノム医療に対する積極性非常に積極的

がんゲノム医療に関わる部門・診療科と役割分担

がんゲノム医療センターを中心に、各診療科・部門が連携して、個々のゲノム変異に基づいた治療方針の決定と薬剤の投与、効果予測因子を踏まえた薬剤の選択、新薬の開発など、患者1人1人にあった「個別化医療」が提供できるようなさまざまな取り組みを行っている

がんゲノム医療に関わる部門・診療科と役割分担

*1:連携先は京都大学医学部附属病院であるが、エキスパートパネルの独自開催が可能となった2024年6月1日より、基本的には自施設で開催

がんゲノム医療センター

  • 腫瘍内科、小児血液・腫瘍内科、病理診断科、遺伝子診療部の医師で構成
  • 院内のがんゲノム診療体制の構築・維持、エキスパートパネルの実施・支援、紹介患者対応などを行っている

エキスパートパネル

  • 自施設(大阪市立総合医療センター)または京都大学医学部附属病院で開催*2
  • 通常の参加者: 腫瘍内科(医師)、小児血液・腫瘍内科(医師)、遺伝子診療部(医師)、病理診断科(医師)、検査対象患者の担当診療科(医師)、がんゲノムコーディネーター(遺伝カウンセラー、看護師)、薬剤師 など
  • 検討内容: 症例の経過およびパネル検査の適応、標的となる遺伝子異常の種類とその病原性・標的としての妥当性、候補となる治験の有無、二次的所見 など

*2:エキスパートパネルの独自開催が可能となった2024年6月1日より、基本的には自施設で開催

地域連携

  • 地域がん診療連携拠点病院*3として、専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の整備、相談支援や情報提供などの役割を担い、地域のがん医療の向上と連携・協力協力を推進している
  • がんゲノム医療連携病院*3として、個人の状態に基づいたがんの医療を実現させるため、がんゲノム医療の推進に努めており、小児・AYAがんのがんゲノム医療にも積極的に取り組んでいる

*3:最新情報はこちらをご参照ください https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin.html

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

当院で実際に経験したNTRK融合遺伝子陽性症例の検出

Polocytic astrocytoma(毛様細胞性星細胞腫)と診断後、CGP検査の結果、「NTRK融合遺伝子陽性の腫瘍」であることが判明し、ヴァイトラックビ治療が開始された症例

症例報告者:山崎 夏維 先生(大阪市立総合医療センター 小児血液・腫瘍内科 医長)

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