NTRK Plus ー私のNTRK融合遺伝子検出経験ー
VOL.4 甲状腺乳頭癌(佐賀大学医学部附属病院)
VOL.4 甲状腺乳頭癌(佐賀大学医学部附属病院)
山内 盛泰 先生
佐賀大学医学部附属病院
耳鼻咽喉科·頭頸部外科 准教授/
独立行政法人国立病院機構
九州がんセンター 頭頸科 医長*
*:2025年4月1日時点
首藤 洋行 先生
佐賀大学医学部附属病院
耳鼻咽喉科・頭頸部外科
助教
第4号では、佐賀大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科でのNTRK融合遺伝子検出例を紹介する。本施設は佐賀県唯一の大学病院であり、患者・医療人に選ばれる病院を目指して、安全で質の高い医療とケアを実践している。がん診療では2010年に「都道府県がん診療連携拠点病院」に指定され、佐賀県におけるがん医療の中核施設としての役割を果たしてきた。また、本施設は2018年に「がんゲノム医療連携病院*」に指定され、がんゲノム医療が提供可能な施設となった。2019年よりCGP検査を開始し、地域の医療機関と連携しながら佐賀県全体のがんゲノム医療の普及に努めている。
今回、本施設 耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診中の甲状腺乳頭癌術後再発 多発肺転移と診断された患者に対して、CGP検査およびエキスパートパネルでの議論の結果、「NTRK融合遺伝子陽性の腫瘍」であることが判明し、ヴァイトラックビ治療が開始された。
佐賀大学医学部附属病院におけるがんゲノム医療
がん治療は、がんゲノム医療の進展により、さらに複雑かつ高度化していくことが予想される。佐賀大学医学部附属病院では、高い専門性と幅広い知識・技能を有するメディカルスタッフによるがんゲノム医療に積極的に取り組んでいる。
当院の基本情報
- 所在地:佐賀県佐賀市
- 病床数:604床(一般580床、精神24床)
- 診療科:29科(耳鼻咽喉科・頭頸部外科、血液・腫瘍内科、総合診療科、呼吸器外科、呼吸器内科、消化器内科、一般・消化器外科、循環器内科、心臓血管外科、脳神経内科、脳神経外科、小児科など)
当院のがんゲノム医療体制
拠点病院などの指定状況
- 2010年 3月:都道府県がん診療連携拠点病院に指定
- 2018年 4月:がんゲノム医療連携病院に指定
- 2019年12月:がんゲノムプロファイリング(CGP)検査を開始
CGP*1検査実施件数
2019年19件、2020年25件、2021年36件
*1:comprehensive genomic profiling
耳鼻咽喉科・頭頸部外科における甲状腺乳頭癌の診療状況とがんゲノム医療
| 甲状腺乳頭癌患者の例数(年間) | 2021年19例 |
| 甲状腺乳頭癌に対する手術件数(年間) | 2021年16件 |
| 甲状腺乳頭癌患者のうち進行・再発症例数(年間) | 2021年6例 |
| 進行・再発症例のうち薬物治療施行例数(年間) | 2021年2例 |
| 進行・再発症例のうちCGP検査実施例数(年間) | 2021年1例 |
| 甲状腺乳頭癌患者・ご家族のがんゲノム医療に対する認知度 | 低い |
| 医療従事者から説明を受けた後の、甲状腺乳頭癌患者・ご家族のがんゲノム医療に対する積極性 | 高い |
がんゲノム医療に関わる部門・診療科と役割分担
がんゲノム診療部門を中心に、各診療科・部門が連携して、一人一人の遺伝子変化に応じた適切な治療をより多くの患者に提供できるよう、がんゲノム医療に積極的に取り組んでいる
*2:京都大学医学部附属病院(成人)、国立成育医療研究センター(小児)
がんゲノム診療部門
- 専任医師および看護師で構成
- 円滑にがんゲノム医療を実施できる体制の構築に努めており、エキスパートパネル前にはPre-事前勉強会および院内事前勉強会を開催し、推奨治療の有無や二次的所見・遺伝カウンセリングの適応について各診療科・部門のメンバーと討議を行っている
エキスパートパネル
- 成人は京都大学医学部附属病院(がんゲノム医療中核拠点病院)で開催
- 小児は国立成育医療研究センター(がんゲノム医療拠点病院)で開催
- 通常の参加者:主治医、がんゲノム診療部門専任医師・看護師、がん薬物療法専門医、臨床遺伝専門医、病理部、検査部、薬剤部
- 検討内容:推奨治療の有無、二次的所見の開示対象遺伝子異常の有無
地域連携
都道府県がん診療連携拠点病院*3として、佐賀県における質の高い医療の提供、地域の医療機関や住民への情報発信、がん専門医の育成などの役割を担っている。また、がんゲノム医療連携病院*3として、地域の医療機関と連携しながら佐賀県全体のがんゲノム医療の普及に努めている。
紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
当院で実際に経験したNTRK融合遺伝子陽性症例の検出
甲状腺乳頭癌術後再発 多発肺転移と診断後、CGP検査の結果、「NTRK融合遺伝子陽性の腫瘍」であることが判明し、ヴァイトラックビ治療が開始された症例
- 症例報告者:山内 盛泰 先生(佐賀大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科·頭頸部外科 准教授/独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター 頭頸科 医長* *:2025年4月1日時点)
首藤 洋行 先生(佐賀大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教)