NTRK融合遺伝子検出のためのNGSの最適化

NGSの概要

NGSを用いたNTRK融合遺伝子の同定

  • 多くの市販のNGSキットがNTRK融合遺伝子を検出できる。NGSを使用すると、複数の核酸ターゲットを高速かつ大規模並列的に配列決定が行える1。この方法は、 NTRK融合遺伝子固有の複数の融合パートナーおよび可変的な構造特性に対応しているため、理想的である2

References

  • Gagan J, Van Allen EM. Genome Med. 2015;7(1):80. Return to content
  • Murphy DA, Ely HA, Shoemaker R, et al. Appl Immunohistochem Mol Morphol. 2017;25(7):513-523. Return to content

RNAベースのNGSか、DNAベースのNGSか

NTRK融合遺伝子の検出にはRNAベースのNGSが適しています1-3

  • RNAベースのNGSは、成熟したmRNA(イントロンが除去されている)を転写し、スプライシングしたものを測定している3
  • RNAベースのNGSは、NTRK融合遺伝子に関する特徴でシーケンスに関連する問題を回避し、インフレームの融合産物を同定することができる2,3,5

一般的なNGS

  • 高い感度と特異度1,2
  • 多項目化: 複数の潜在的アクショナブル遺伝子(例:ALKROS1RET)を同時に測定する4
  • ブレークポイントや融合パートナーに関係なく、既知の融合パートナーと新規の融合パートナーの両方を検出する(ライブラリ調製法による)2,5

RNAベースのNGS

  • 転写されたインフレーム融合遺伝子と転写されていないアウトフレーム融合遺伝子を区別できる2,5
  • NTRK遺伝子の長いイントロン領域の塩基伸長の問題を回避する3

References

  • Murphy DA, Ely HA, Shoemaker R, et al. Appl Immunohistochem Mol Morphol. 2017(7);25:513-523. Return to content
  • Serrati S, De Summa S, Pilato B, et al. Onco Targets Ther. 2016;9:7355-7365. Return to content
  • Abel H, Pfeifer J, Duncavage E. Translocation detection using next-generation sequencing. In: Kulkarni S, Pfeifer J, eds. Clinical Genomics. New York, NY: Elsevier/Academic Press; 2015:151-164. Return to content
  • Farago AF, Azzoli CG. Transl Lung Cancer Res. 2017;6(5):550-559. Return to content
  • Schram AM, Chang MT, Jonsson P, Drilon A. Nat Rev Clin Oncol. 2017;14(12):735-748. Return to content

NGSの方法

配列データ収集のために一般的な5種類のNGS法が用いられています1-4

  • シークエンス法の選択は、対象ゲノム領域とバリアントタイプによって決定される。その後、NGS用プラットフォーム(測定機器)、NGSパネル(試薬)、バイオインフォマティクス解析法などが選択される

全ゲノムシークエンス

  • ゲノムのコード化領域(エクソン)と非コード化領域(イントロン)などの大部分の配列を決定する5

全エクソーム配列決定

  • 個人のゲノムのコード化(エクソン)領域を標的とする5

全トランスクリプトームシークエンス

  • mRNA転写物を標的とする。 個人のゲノムの核酸配列の発現、量、変化の有無を判定できる5

ターゲットDNA/RNAシークエンス

  • SNV、Indel、CNV、Fusionなどのゲノム変化に対して、臨床的に意義があり、実用的な遺伝子(例:EGFRBRAFKRASなど)に焦点を当てて、選択した目的の遺伝子を標的にする5

ターゲットホットスポットシークエンス

  • 遺伝子の頻繁に変異した「ホットスポット」領域を標的にして、よく知られたSNV、Indel、CNV、Fusionを検出する(ブレークポイントとパートナーがわかっている場合)6

References

  • Wang Q, Xia J, Jia P, Pao W, Zhao Z. Brief Bioinform. 2013;14(4):506-519. Return to content
  • Dong L, Wang W, Li A, et al. Curr Genomics. 2015;16(4):253-263. Return to content
  • Jennings LJ, Arcila ME, Corless C, et al. J Mol Diagn. 2017;19(3):341-365. Return to content
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  • Meyerson M, Gabriel S, Getz G. Nat Rev Genet. 2010;11(10):685-696. Return to content
  • Oliveira DM, Mirante T, Mignogna C, et al. Oncotarget. 2018;9(32):22749-22768. Return to content

NGSワークフローの概要

確実な検査とレポート作成を可能にするためには、あらゆるステップでNGSのワークフローを最適化する必要があります1

次世代シークエンシングのワークフロー

検査前プロセス(プレアナリシス段階)

①核酸抽出:検体

  • 生検組織や血液サンプルからDNAやRNAを抽出し、濃縮して配列決定を行う1

検査プロセス(アナリシス段階)

②ライブラリの調製:パネル

  • 遺伝子・領域(数個から数百個まで)を選択し、シークエンスする1
  • 標的濃縮(ハイブリッドキャプチャーまたはPCRを介して)を行い、対象領域を選択して増幅する1
  • クローナル増幅(必要に応じて)を行い、配列決定を成功させるのに十分な材料を確保する1

③配列決定:DNAシーケンサー

  • 検査した核酸サンプル中のヌクレオチドの配列を決定する1

検査後プロセス(ポストアナリシス段階): バイオインフォマティクス

④分析する

  • バーコードで固有の患者を区別する2
  • シーケンスリードを参照シーケンスにアラインメントする1
  • ノイズ、繰り返し配列をフィルタリングする1
  • バリエーションを識別する1
  • 臨床的に意味を持つ可能性のあるものと、通常のヒトのバリエーションとを比較して決定する1

⑤アノテーションとレポート作成

References

  • Jennings LJ, Arcila ME, Corless C, et al. J Mol Diagn. 2017;19(3):341-365. Return to content
  • Aziz N, Zhao Q, Bry L, et al. Arch Pathol Lab Med. 2015;139(4):481-493. Return to content

分析前フェーズ

NGSを用いたゲノム変異の検出は最初の検体の質により大きく影響されます1

  • 病理医はNGS検査を行う前に、顕微鏡下で腫瘍組織を評価することが非常に重要である。腫瘍含有割合が低いような場合には、マクロダイセクションまたはマイクロダイセクションによって腫瘍部位のエンリッチメントを行い腫瘍細胞含有割合を高める必要がある1

検体の取り扱いに関する主な検討事項

  • 不均一性
    • 正常細胞と比較して十分な腫瘍細胞量を確保すること1
    • サブクローン集団の違いにより、異なる突然変異の組み合わせが生じる可能性がある
  • 検体の大きさ
    • 生検方法により利用可能なDNA/RNA量が制限されることがある1
  • 前処理
    • ホルマリン固定は核酸塩基の化学修飾が知られており突然変異を生じさせることがあるため、NGSのような高感度技術を使用している場合、偽陽性になる可能性がある1
腫瘍組織の評価とマイクロダイセクションによる腫瘍含有割合のエンリッチメントは、分析に必要な十分な腫瘍を確保し、遺伝子変化に対する感度を向上させることができます1

References

  • Jennings LJ, Arcila ME, Corless C, et al. J Mol Diagn. 2017;19(3):341-365. Return to content

分析フェーズ

ライブラリ調製はNGSプロセスにおける重要なステップです1

  • ライブラリ調製は、適切なNGSプラットホームで配列決定が可能な対象領域を示す標的配列のプールを生成する。標的濃縮は、このステップの重要な要素である。 標的濃縮では、サンプルから抽出されたDNAまたはRNAは、対象領域が濃縮され、選択されたプラットホーム上での配列決定用にフォーマットされる1
  • ライブラリ調製中の標的濃縮法の選択は、NTRK融合遺伝子を検出する際の主な検討事項である2,3
  • 標的濃縮のための一般的な方法は、アンプリコン法とハイブリッドキャプチャー法である。 どちらの方法も、様々なゲノム変化を最適に検出する機能に影響を与える特徴を持っている1

アンプリコン法とハイブリッドキャプチャー法

 

アンプリコン法

ハイブリッドキャプチャー法

検出されたバリアント
  • 既知の対象バリアント(SNVや Indel)の検出に最適4
  • 既知の特異的融合遺伝子(例:EML4-ALK)およびCNVを含めることができる1
  • アッセイデザインに応じて、すべての作用可能な突然変異(CNV、SNV、Indel、Fusion)を幅広く検出できる可能性があり、新規融合遺伝子パートナーを含む可能性がある1
メリット
  • 一般的に小さなパネルに使用され、SNV、Indel、既知の融合体に最適1
  • 比較的少ない核酸量でも解析可能1
    • 多くの遺伝子やゲノム領域の検出が可能1
    • 新規融合パートナーとの融合を検出できる感度1
      デメリット
      • 融合遺伝子を含むすべてのゲノム変化を十分にカバーするためには、複雑な増幅設計が必要1
      • 対象の遺伝子領域によっては核酸量が多く必要1

      クローナル増幅は、正確な配列決定のために必要なテンプレートのコピーを調整します1,6

      • NGSプラットホームによっては、配列決定を成功させる十分な材料を確保するためにクローナル増幅が必要となる場合がある1

      Thermo Fisher Ion Personal Genome Machine、Thermo Fisher Proton、またはQiagen GeneReaderで用いるクローナル増幅法6-8

      エマルジョンPCR

      Illumina MiSeqまたはIllumina NextSeqで用いるクローナル増幅法6,9

      固相ブリッジ増幅

      References

      分析後プロセス

      バイオインフォマティクス: NGSデータの分析、解釈、および報告

      • NGSで検出された変異に対して、どの遺伝子の、どの領域の変異かを特定し、その変異が引き起こす効果について注釈をつける。この作業は入手可能な複数のバイオインフォマティクスツールを使用し、自動的に行われる
      • シーケンシングプロバイダーやサードパーティベンダーから入手可能な複数のバイオインフォマティクスツールを評価、選択、統合して、融合遺伝子の発見と同定を可能にするNGSの検証済みバイオインフォマティクスプロセスを作成する1

      バイオインフォマティクスワークフロー: 正確な融合遺伝子検出のための重要なプロセス1

      • シーケンスデータ:プラットホーム固有のDNA配列が決定され、逆多重化されて、患者固有の配列リードのプールが生成される1
      • アライメント:コントロール(参照)のDNAゲノム配列と比較することにより、患者固有の配列リードをアセンブルまたはマッピングしたもの1
      • バリアントの呼び出し:リファレンスとは異なる、リードまたはリードのセグメント内のDNA塩基対は、バリアントとして記載される1
      • バリアントアノテーション:生物学的関連性を判断するために、バリアントを公開データベースまたは専有データベースと比較する1
      • バリアントの解釈:関連するバリアントを公開または専有のデータベースと比較し、アノテーションの臨床的背景を決定して追加する1
      • シーケンシングレポート:主要な所見とエンドユーザーへの実行可能なステップを提供する(すなわち、患者を治験にトリアージしたり、標的治療を処方したりする)1

      RNAベースのNGSを実施するための実験的・バイオインフォマティクス的考察

      リード数

      • 融合遺伝子検出をサポートするためには、RNA転写配列の総リード数を研究対象システムに最適化する必要がある2

      リード長

      • ペアエンドシーケンシングとより長いシーケンスリードは、アライメントの際に融合した遺伝子に対してより高い特異性を持つオーバーラップカバレッジを蓄積するデータを提供する2
      • これは、一般的に断片化されたDNA/RNAを含むFFPE検体では問題となる可能性がある2

      リードのフィルタリング

      • リボソームRNAなど、融合遺伝子に関与している可能性が低い高発現遺伝子に由来するリードを予測し、適切にフィルタリングする必要がある2

      リード率

      • 融合境界付近でのキメラ型と野生型のリードの比率が低いことは、リードのスプリアスミスマッピングを示している可能性がある2

      融合遺伝子の検出方法

      • 融合遺伝子を構成する遺伝子のうち1つの遺伝子の配列にリード中の配列が強くアライメントしていれば、融合配列予測の可能性が高いことがわかる2
      • 融合遺伝子は通常、野生型遺伝子のスプライシングパターンに従うので、野生型遺伝子のスプライシングパターンと一致するエクソン境界での検出は融合遺伝子配列同定のもう一つの有力な指標となる2

      References